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ワーグナーチューバの概要

 写真のように楽器の形は卵型(オーバル形状)でベルが舞台下手方向に曲がっているのが特徴です。ロータリーバルブ楽器で、バルブ左手で操作し、通常ホルン奏者が持ち替えて演奏します。ワーグナーの楽劇「ニーベルグの指環」やブルックナーの7番以降のシンフォニーで登場する際、4本セットで演奏されます(内訳はB管2本(テナーチューバ)、F管2本(バスチューバ)。4本が奏でるハーモニーは重厚且つ荘厳で、教会のパイプオルガンを彷彿とさせます。時にコントラバスチューバ、ブラス群と一体となり、オーケストラの響きをより充実したものにします。その一方、その長く細いマウスパイプのため、音程のコントロールが大変難しく、正確な音程を維持するため、時に通常ではありえないような運指で演奏するこることを強いられる(こともある)。加えて弱奏でのアタック、ロングトーンも大変コントロールが難しいが、ロングトーンが途切れる場合、プレスが不足しているようだ(アレキサンダーオーナーズクラブ、web site 東京都交響楽団 和田氏談)。一昔前は、楽器が調達できずにユーフォニアムを用いたり、練習直前まで楽器が調達できない事態もあったが、インターネットの進歩による「悪いアマチュア奏者ww」による海外からの直輸入、中国製の楽器が安価に入手できるようになり、以前のように楽器が調達できないという理由だけで、ブルックナーのシンフォニーが演奏されない事態は減少してきているようだ。

歴史

 歌劇の王様、R.ワーグナー(1813−1883 独)が楽劇「ニーベルングの指環」(総演奏時間12時間以上)の上演にあたり、物語にマッチングした響きを実現するために新たな楽器について着想した。チューバでは重厚すぎて、且つ旋律には不向きな部分もあることからのことである。その後、1853年、サキソフォンの創案者アドルフサックスの店に立ち寄ったことが新たな楽器の誕生に関わっている。またホルン奏者が演奏するという前提から、バルブはホルンホルン同様、左手で操作することが背景にある。マウスピースについてもワーグナーチューバではカップが深いものが使用されるのが一般的だが、現在では、基本的にはホルンとワーグナーチューバで使用されるマウスピースは、どちらの楽器でも使用可能である。

問題点と考察

下の写真(a)を見て頂きたい。1-2にわたり細く非常に長いマウスパイプがご覧いただける。そうです、これが音響学上の問題点、音程の悪さの原因なのです。カーブしたオーヴァル状のベルも直管ではないので音程に問題点をもたらします。さらにこの細いマウスパイプと太いベルの管の直径のアンバランスさも音程上悪い相乗効果を生んでおります。ホルン奏者は音程をどうやってコントロールするのでしょう??そうです、右手です。もちろん抜き差し管の調整、アンブシュア、マウスピースのバリエーションでも調整可能ですが、即効性のある微調整方法は右手なのです。ワーグナーチューバには右手による音程調整が使えません。この楽器が改良されてこなかった理由はわかりません。でもそのアンバランスさや問題点の固まりの上にあの魅力的な音、オーケストラでの音響効果が成り立つのであればもはやこのままでも良いのでしょう

 

           写真 (a)               写真(b)  

もう何点か。ホルンとワーグナーチューバの持ち替え時の問題など。ブルックナーの8番番シンフォニーなど、5−8番奏者がホルンとの持ち替えをする場合。舞台上はただでさえ様々な楽器でひしめき合い、楽器をおいておく場所にも四苦八苦する。曲中にはミュートも必要なため、さらに演奏位置周辺が過密になる。出来ればユーフォーニアム用、ギター用のスタンドを使用して立てて置いておくのが良い(転倒の可能性もあるため、できれば舞台上に寝かしておくか楽器用のいすを用意したいところです)。ミュートについてだが、専用の物は入手はできるがバリエーションが少なく、ユーフォーニアム用の物を転用、野球応援メガホンやビール樽を使っての自作。

楽譜上での問題として挙げられるのは、奏者の混乱をさせるためにホルンとワーグナーチューバの楽譜は別になっている場合。ゲシュトップやミュートの指示のようにどこで持ち替えるか適切な指示が書いていない。さらに春の祭典のテナーチューバパートに代表されるように、B♭アルトかB♭バッソの指定がないのである。指揮者が気づかなければどっちでも良いっていう感じですが、音源等で確認しつつ、常識的な音域で演奏するか、演奏経験のあるプロ奏者に尋ねてみるのも良い。その他、当然のことですが、バスチューバパートはへ音で書かれている場合が多く、しかもブルックナー作品の譜面は臨時記号が大量についている。あれにはほとほと困り果てるので実音名を書き込むか暗譜するしかない。また個体にもよるが、音階を階を吹いていくと必必ずと言っていいほど音程が低すぎたり、高すぎるという音に遭遇する・抜き差し管で調整も可能だが、変え運指を研究するするのが近道だ。

おまけ(構え方)

 上の写真(b)を見て頂こう。左手はもちろんロータリーレバーを。右手は別にどこを握っても良いと思いますが、写真のようにベルとマウスパイプに手を添えて演奏するのが一般的に良く見られます。その他、地面と垂直方向のベルの側面を掴んで固定するのも一般的だ。